日本の若年層に横たわる闇と入管の闇

Twitterで東京クルドというドキュメンタリー映画が上映されていることを知り、渋谷の劇場へ向かいました。
映画のあらすじはホームページなりで調べてもらうとして、この映画は日本で生きて学び、働いて、多くを望まないが、人として生まれた以上、尊厳を持って生きて暮らしたい。そう願う、全ての人に観てもらいたい映画です。

日本の若年層の約3割は自殺を考えたことがある、とニュースなどで伝えられているけれど、その原因の上位にあるのは学校でのいじめや不登校。
学校でのネガティブな経験から、その後自殺を考えたり試みたりするという。

人はなぜ人をいじめるのか?なぜ人は人から生きる活力や喜びを奪ってまでして、生きるのか?
日本人が異常なのか?繊細すぎるのか?それとも日本人はいじめを好む陰湿な性格なのか?
そういう疑問に答えてくれるのが、東京クルドだと思う。

入国管理局で働いている日本人職員の、人の苦しみを嘲笑いながら放つ言葉。
私から二席隣に座っていた50代くらいの日本人男性は、スクリーンを観ながら何度も何度も深い溜息をついていた。
映画館ですすり泣きや笑い声は何度も聞いたことはあるけれど、あんなに溜息が聞こえてくるのは初めて。
日本の若年層が抱える闇と、入管に潜む闇には共通したものがあるように見えた。

人間であれば誰の心にも悪魔は潜んでいる。自分の中に潜む悪魔が外へ出ようとする時、それをどう抑え封じ込めるかが、豊かな人生の道を探す鍵なのだが、残念なことに悪魔をひっきりなしに量産し放出する人もいる。自分は他人とは違う特別な存在だと信じることで、脆い自分を支えている人々。
特別な人間とは誰か?そんな人間なんていないんですけどね。
社長、大臣、首相、大統領、天皇、王様、誰がつくったか?彼らと同じ人間。生きている間のおままごとに過ぎません。
ウィシュマさんの件についても、東京クルドに出てくるオザンさん、ラマザンさんについても、彼女や彼らの生きる道を邪魔している人は、特別な力(権力)が自分には備えられていると信じているのでしょう。でも、それは幻想。そんなものは一瞬にして消えてなくなります。一度得た特別な力を失うのが怖くて、怖くて仕方がないから、彼らに対する締め付けを強化しているのだろうけれど、それは単に自分の首をより一層締め付けているとしか思えません。

自分の道を探す

他の者の運命を邪魔する者は、自分の運命を決して発見しはしない

これは小説『アルケミスト』に出てくる言葉です。他人の進もうとしている道を邪魔する人に、自分の道なんてどこを探しても、どんなにお金をかけても、探せないんです。一度、間違った使い道で権力を振りかざした人は、常に特別な道が自分には用意されていると信じ続けられなければ、辛くて生きていけないのでしょう。
しかし、人の道を邪魔してきた人の晩年はというと、孤独です。そういう人の話を聞いても何一つ響いてこない、本人だけが気持ち良い話で終わります。よって、そのような人から話し相手は消え、ましてや若い人がその人の周りに集まるなんて奇跡が起きることもなく、孤独の谷底に一人、場合によっては最後の最後まで他人の道を邪魔し続けながら最後を迎えます。

看取りの仕事を続けてきた看護師の友人が言っていました。

今まで芸能人、社長、豊める人から貧しい人まで看取ってきたけれど、その人がどう生きてきたかは死んだ後の顔に死相として現れるんだよね

他人の道を邪魔した人の死相は・・・想像したくないですね。

仕事がダメなら物々交換

東京クルドでは入管職員から「仕事はするな」と言われたオザンさん。「仕事をしないでどうやって生きていけばいいんですか?」との問いに、「それは、そっちで考えてよ」と、入管職員。

自分で考えろ、ですか。はい、では考えてみます。
仕事はしちゃダメなんだよね。仕事をして、報酬を得て、税金を払って、この国で働いて生きることが許されない。

オザンさんの暮らす部屋の壁には、クリムトの接吻のポスター、日本の竹林、南米かどこかの港の写真と、色とりどりのいくつものアートが飾られていたのを見て思いついたご提案。彼は自分のことを不良で、やりたいことが見つからないと言っているけれど、こういう人がアートに行き場のないパワーを注いだら、すごいのが生まれそう。彼はとても優しくて強い人なんですよ。
お仕事をして、対価としての報酬を得て暮らすことが許されないのならば、アート活動をして物々交換してみたらいいんじゃないかな?

そうだね、例えば、廃材を使ったアート作品を作ってみるとか。
作品はネットでも発表できるし、展覧会だってスペースを貸してくれる場所は見つけられる。むしろ、アーティストはこういうことのために生きている人が多いからね。個展を開く時は、アートをよく理解してくれる、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、オランダ、ベルギー、ドイツ、イギリス、アメリカなどの大使館に招待状を送ってみたらいいと思う。特に、帯同して来日している大使館員のご婦人、ご夫人方は、こういうアートイベントにアンテナを張っている方も多いので。でも、作品を現金と引き換えちゃダメよ。仕事はNGだからね。けれど、物々交換なら大丈夫。仕事につけない小学生でもやっているから。私も小さい時やったなー。消しゴムの交換会。

さすがに入管もアート活動を阻止することはできないはず。彼らがタリバンのような思想を持っていなければ。