ハンコのデザインコンペに参加

今年1月からNewハンコprojectと名を打って、粛々と図案作りを進めてきました。コロナが蔓延してから一層脱ハンコと言われる中、この人はなぜこのタイミングでハンコ作りに精を出しているんだろう?と思われたかもしれません。

なぜって?動機は?

いたってシンプルです。2021年、桜は散り眠気もスーパーMaxな頃、ネットでハンコのデザインコンペがあることを知ったのです。
初めは(ハンコ・・・ですか・・・)と興味はさほどなかったのですが、私の心を鷲掴みにしたのは、臆さず正直に言います。

賞金です。

グランプリ賞金300万円。

ちょうどその頃、スタート初期から携わってきたベンチャーが倒産するか否かという瀬戸際にあり、そうなったら賞金で稼ぎつなごう!と思ったのがコンペに参加する動機でした。(ベンチャーはその後も運よく続いています)

閃きは突然やってくる

デザイン案をいくつか出した後、実際に手を動かしてみると分かるんですね。この案はハンコ従来の使い方の逆をついて面白いかもしれないが、プロダクトとして売り出されたとしても数年しか持たないだろう。大の大人がハンコをペッタン、ペッタン押して遊ぶなんて事は殆どないだろうから、と。

そこでコンペに一緒に参加してみない?と声をかけた友人に相談し、デザイン案を一緒に考えてもらうことに。二人でアイディアを出していったのですが、どれも何かが欠けていたのです。ガツンと轟くものがない。
そんな時はひとまず休憩が必要ですね。脳をリラックスさせてあげなくてはなりません。
ということで、クラフト酒を取り出し乾杯!

呑み始めてしばらくすると、降りてきたんです。

友人は何かに閃いた様子で
「このどぶろぐにヨーグルトを入れてみたら、間違いなく美味しいと思う!」
はっきりした口調でした。
私は0秒で行動。近くのコンビニへ走り、ブルガリアヨーグルトを購入。さぁヨーグルトを入れて再び乾杯となる瞬間、再び友人から待ったの声が。

「パプリカパウダー、これがいいアクセントになるはず!」
すぐさま台所へ走りパプリカパウダーを握って戻ってきた友人。ヨーグルト&どぶろぐの乳酸最強コンビにビタミンC、カロテンが豊富なパプリカパウダーが降り注がれ、一口飲んでみると。
それは、まさに健康飲料です。

美味しいお酒と肴、すっかりハンコのことは忘れかけていた、その時です。
目があったのです。
机に置かれた土偶の文鎮が、ジーーーーっとこちらを見ていたのです。

「お前たち、何やら賑やかに楽しそうだな。どぶろぐにヨーグルトはナイスアイディアだった。しかし、ハンコのことを忘れてはいやしないかい?
日本酒、葡萄酒に歴史があるように、ハンコにもなが〜い歴史があるんだよ。葡萄酒とハンコの関わり合い、お前はハンコの書籍で学んだはずじゃなかったかい?」と土偶が喋ったような気がしたのです。

ハッと我に帰った私は、もう一度ハンコの歴史を振り返り、なぜハンコが約7000年もの間使われ続けてきたのか?その当時、人の往来がなかったはずの大陸や地域でハンコの起源となる物が出土し、その用途には共通するものがあったのです。
ハンコの始まりは護符として、やがて封印や封書など鍵の代わりとして使われ、それが現代にまで通じる本人の身分や財産を証明するものへと変わっていったのです。

身分に関係なく誰もが身につけていたハンコ

ここで少しハンコの歴史に触れてみましょう。
ハムラビ王の時代はハンコの全盛期。円筒印章に紐を通してネックレスやブレスレットとして身につけるようになりました。
当時バビロニアでは女性から奴隷に至るまで、成人でハンコを身につけていない者は一人もいなかったと言います。古バビロニア王国、アッシリア王国、アケメネス王朝とハンコ文化は約3000年に渡り、円筒印章は繁栄しました。

アケメネス王朝時代、ろくろ技術が導入され精巧な細工が可能となると、印章は大型となり、美麗な石や金銀などの装飾を加えました。印面もかつては神話や狩猟、戦闘を表現する図案から王の権力を礼讃するものへと変わり、アレクサンドロス大王によってアケメネス王朝が滅ぶと同時に、円筒印章もその役目を終えました。

女性から奴隷、当時身分が低いとされていた者もハンコは装飾品というより護符のような意味合いで身に着けていたのではないかと思われます。
それが徐々に権力を象徴するものへと変わり、ハンコの作り手が権力者の周りばかりに集まるようになり、庶民のハンコを作ろうとする職人が減っていったのではないか?
推測でしかありませんが、ハンコを身につける人が減っていったのは間違いないようです。

ハンコ元来の目的を現代に当てはめてみる

ハンコが細々とでも7000年の間、生き残ってきた理由。それは明らかに、自分の存在を証明するもの、何らかの目に見える形で残したいという人間本来の願望です。それは7000年経った現在でも変わらないですよね。なのでペッタン、ペッタン押すハンコでなくても良いと思います。
現代だったらどんなシーンで使いたいかを考えたところ、降りてきたのが表札。

個人を特定されないように、セキュリティの観点から掲げにくい表札。
特に、都市部にある集合住宅の郵便受けに名前を出す人は殆ど見かけません。
そこで自分と家族だけが分かる自分だけのしるし=私紋(しもん)を作って掲げてみたらどうだろう?殺風景な風景も変わるんじゃないか?という想像から表札を提案の一つとして提出しました。

とりあえずやってみる

コンペの結果は落選でした。それでも、とりあえず自分たちの分だけでも作ってみようと今年初めから私紋づくりを始めました。
デザインをして、モックアップの表札を作り、木工所を営む従兄弟に相談すると、
「いいじゃん!なんでコンペに落ちたの!?」
ハンコのコンペに表札を提案するのだから、そりゃー落ちますよ!

すぐに表札とゴム印を作って送ってくれました。

表札のモックアップ
イメージ通りの表札!


その後、雑貨屋を営む友人と会った時、今こんなのを作っていて、ワークショップを開いてみようかなーとぼんやりと考えていることを話すと
「面白い!うちを使って。」と返事をもらい、6月から試運転を重ねました。

とにかく具体的に動いてごらん。具体的に動けば具体的な答が出るから

相田みつを

私紋スクエア、ソフトオープン

具体的に動いた結果、ソフトオープンに漕ぎ着けることができました!
この先どうなるかは全くもって未知数ですが、マイペースな人間なのでこれからも粛々と進めていきたいと思います。
ソフトオープンでは対面から始めますが、様子を見ながらオンラインでの実施も考えています。

最後に私紋スクエアの名称ですが、私紋のデザインは正方形内と定めています。
正方形はどの辺も等しいことから、平等を意味します。
先にも述べたように、古代メソポタミア時代では女性も奴隷もハンコを身につけていたと言われています。またローマ帝国時代でも、貴族階級は黄金の指輪式ハンコを、自由民は銀製、奴隷は鉄製を身につけていました。
しるしだけは平等に与えられたようです。
さらにスクエアには広場という意味もあるので、個々の秘めたしるしが集う場になったら、インディ・ジョーンズに出られるのではないかという期待もしっかりと織り込み済みです♪

皆さまのご参加をお待ちしております!

手描きのデザインをコンピューターで整えます
私紋だよ!全員集合!