紆余曲折あってボランティア歴が職歴以上になった私がグラフィックデザイナーが欲しいと願う、非営利団体へアドバイスをするならば

まずはボランティアをしたいと応募してきたデザイナーと直接会って、その人の得意とするデザイン分野、スタイルを見て聞いて、団体とのニーズに即しているかを見極めた上で、即しているならデザイナーにどのような内容をお願いするか擦り合わせを行うことを提案します。
デザインしてもらえたら助かるな、嬉しいなと思うことは色々とあるでしょうが、一方的にあれもこれもとお願いをされると引いてしまいます。ただ引くだけならまだしも、搾取されると危機感を抱かす場合もあります。自分が属する団体の資産にもなるけれど、ボランティアのデザイナーにとっても資産になるかを考えてあげてください。デザイナーにとっての資産はポートフォリオです。

そもそも非営利団体と呼ばれる組織は、全員がボランティアで成り立っているわけではなく、ファンドレイザー、プログラムオフィサー、広報、経理など有給スタッフがいます。ですが常駐で有給デザイナーがいる団体は私の知り限り国連本部くらいです。それなりに財力のある団体であれば外注をするのでしょうが、多くは自主制作かボランティアにお願いをしています。

デザイナーもボランティアに応募する際は、それなりの考えや思いを持って応募していますが、同時にデザインを無償で提供することに批判的な意見、同業者からの批判的な意見も頭にあります。無償でデザインを提供することで自分たちの価値を不当に下げているという意見です。ですからデザイナーは不当に自分たちの価値を下げられないように、相手をよく見ます。相手との会話や行動、対応の細部から全体像を掴み総合的にコミットするかどうか判断します。
元来、デザイナーはクライアントの想いを形にする職業なので目に見える表面的な部分だけでなく、クライアント自身も気づいていない潜在的要素や本質を掴み取ろうとする癖があります。私の経験上の話ですが、想いの強い深い人ほど、その人が言葉にする絵と求めている絵が最終的には大きく異なります。言い換えれば、想い描く絵を言葉にしたら違うものになっていたという話しです。

デザイナーを含め、忘れてはいけないこと

そして何より大事なことは自分の仕事に自惚れないことです。
これは無償ではなく、かなりお値引きをしてデザインの依頼を受けた団体との仕事経験からです。担当者の性格に依るところが大きかったと思いますが、優しく言えば強い信念、厳しく言えば強制的な共同体意識(これだけのことを私たちもしているのだから、あなたもそれなりにコミットしてね)があったため、報酬に対するデザイン要求がどんどん膨れ上がっていきました。非営利、営利とその両方があるから社会が成り立っていることを忘れていたのでしょう。非営利だけが慈善事業と考えては危険です。

人に無償で事業やプロジェクトに参加してもらうのは、人を有償で参加してもらうより何十倍と難しいと思います。どんなにその団体の知名度が大きくても、最終的には一緒に仕事をする相手です。デザイナーにいい仕事をして貰いたいと思うならば、相手にとって何がベストかを先に考えてあげることです。相手にとってベストな依頼内容がその時にないのなら、何でもかんでもお願いするのではなく、必要な時まで待ってもらえばいいのです。その方が何でもかんでもお願いされるより、よっぽど気持ちよく仕事ができます。

非営利団体を見定める一つの指標

デザイナーだけに限らず、長くボランティアを続けてくれる人がいるところであれば、その団体は本当の意味でいい仕事をしている団体と言えると思います。どんなに大きなミッションを声高に叫んでも、心躍るかっこいいホームページであっても、無償で支えてくれるボランティアがすぐに辞めてしまうところは看板だけが輝いているということです。

最後に辛辣な人間観察で知られる、ラ・ロシュフコー箴言集から

洞察力の最大の欠点は、的に達しないことではなく、その先まで行ってしまうことである

デザイナーにある、あるある話ですね、笑。

時には片目をつぶることも忘れないようにしましょう!