岡本太郎記念館

ずっとずっと行きたかった、青山にある岡本太郎記念館へ行ってきました!
3月19日から大阪では内部修復を終えた『太陽の塔』が48年ぶりに一般公開され、70年の大阪万博後に行方不明となった『地底の太陽』も復元され展示されています。
地底に太陽、マグマではなく太陽。マグマと聞くと怒り、義憤といった印象を抱くけれど、太陽と言われれば「私たちは地底からも照らされているのね」と和やかな印象に変わります。それにしても、11メートルもある巨大な地底の太陽はどこへ消えちゃったんでしょうね?

記念館の2階では『太陽の塔』の模型展示と『地底の太陽』のレプリカ展示、1階には太郎さんのアトリエと応接間があります。アトリエには絵具や絵筆、キャンバスなどの画材類、上部には書籍が並んでいます。そして応接間には太郎さんの代表作品のミニスケール版たちが展示されています。
その応接間をぐるっと見渡し、その場を後にしようとした瞬間でした。応接間の隅っこです。隅っこに目を奪われました。私以外の誰にも理解はできないだろうけれど、隣り合わせになっているオブジェが問題なのです。いや、問題なのはオブジェ自体ではなく隣同士に並んでいることが私にとって問題だったのです。

岡本太郎記念館「こどもの樹」と「歓び」

『こどもの樹』は青山にあったこどもの城(2015年に閉館)の前に鎮座し、『歓び』は四谷にある持田製薬会社前にあります。

こどもの樹

私がunicefでボランティアをしていた3年間、国連大学へは渋谷から歩いていたので必ずこの『こどもの樹』の前を通っていたのです。いつ頃だったか正確には覚えていませんが、国連のブランディング、イメージの力について色々と考え始めた頃だったと思います。この『こどもの樹』がちょうどその後ろにあるブルーの国連旗より何十倍も力強く根が張っているように見えてしまったんです。笑ってしまうと思いますが、太郎さんが「Peaceなんていう枠に収まるなよ!」と言っているように思えてきてしまったのです、笑。太郎さんなら真剣な顔して言いそうでしょ?でも、そのくらい国連には人を惹きつける力がありました。磁力とも魔力とも言えるような力です。

こどもの城 こどもの樹

unicefで3年間のボランティアを終え、それから一年間は自分の仕事に専念しました。ボランティア好きという訳ではないのですが、色々と思うところがあってまた別のところで、unicefと同等のことは出来ないけれど、自分が出来る範囲内でしようと思いプロボノ先の候補を二つに絞りました。絞ったと言っても、直感でしか最終的には決められない人間なのでこっちだろうなーと思う方に連絡をし、その団体の代表の方とお会いすることになったのです。

歓び

四谷には詳しくないので、その団体がある建物はこの辺りのはずとビルの看板に目を上下に走らせながら通りを歩いていた時です。ヌっと巨大な石ころが現れたんです。一目見れば太郎さんだと分かる顔です。思わず足を止め、石ころについてるプレートを確認したらやっぱり太郎さんなんです。「は?なんで??なんでここに太郎さんがいるの?」あまりの驚きに周囲を確認してしまいました。まさか私にだけ見えている幻覚じゃないよね?そして、またしても目的地の建物が太郎さんの隣なんです。「なんでまた太郎さんの隣なの!?!」誰かに尋ねるわけにもいかなかったので、面会まで時間があることを確認し、その界隈をぐるっと一周してみたんです。一周したら消えてた!なんてことはありませんでした。街中にある彫刻の多くは広場と言えるほどのスペースに存在します。ビルが彫刻を所有するのであれば最低でも車寄せがあるビルです。しかし四谷の太郎さんがいるビルには車寄せのスペースすらありません。巨大顔を持つツクシが路地に生えたと言った感じです。その界隈も飲食店が入居する雑居ビルばかりで、太郎さんの石ころ以外にアートらしきものは一切見当らなかったのです。まさに、太郎さんのイタズラとしか思えない奇妙な出来事でした。

持田製薬会社 歓び

その後、『岡本太郎に出会う旅』というタイトルの本を購入しました。全国にある太郎作品を紹介する本です。
それによると『こどもの樹』には次の言葉がありました。

もし子どもの絵が美しいなら、彼らが紙にぶつけている、その時の姿と、描かれたものが一体になってともに輝くのだ

ピカソも「子どものような絵がかけるようになった。ここまでくるのにずいぶん時間がかかったものだ」と言葉を残したくらいですからね。大人が子どものように絵を描くのは本当に難しいのです。

そして『歓び』にはというと、

自分が何か充ち足りていない。欠落した部分がある。ひたと向かいあって一体になる相手は誰なのか。これが『愛』の問題の根底だと思う。だから人は自分にないもの、むしろ反対のものに惹かれるんだ

ふむ。

このレベルになると、フォーチュンクッキーですね。太郎のフォーチュンクッキー。クッキーを砕くと中から「太郎のことば」が出てくるっていうクッキーです。
でも太郎のフォーチュンクッキーだから、どれを選んでもトゲトゲしくて口に入れられないんだね。

話しをぐいっと元に戻して、私が『こどもの樹』と『歓び』に立て続けに出会ったのも、太郎さんの応接間に並んであったように、二つの石ころはきっと大の仲良しなのでしょう。

芸術はありがたいと拝むようなものじゃない。道ばたの石ころと同じなんだよ

岡本太郎記念館 2階のベランダから顔を出す太陽の塔